さゆりのエッセイ @

息子が保育園の時、保育園の先生に勧められて、絵本の読み聞かせに関するエッセイを応募することになりました。
子育て真っ最中の働く主婦の悩みを書いてみました。
このエッセイが運よく、平成5年度「マザーズ・タッチ」エッセイ集に掲載されました。
『 我が家の「オリバーくん」 』
私は仕事をもつ母である。
今日は仕事を家にもってきた。明日までにでかさなければ・・・・・。
午後9時、いつもなら眠りについている3歳の息子だが、こういう時に限って目をギラギラさせて、
私に仕事をさせてくれない。
「お母さん、これよんで!!」
ともってきたのは『オリバーくん』。
この絵本は彼のお気に入りだ。もうすでに本を開いて、特等席(私のひざの上)にすわっている。
しょうがない、母の務めも果たさなければ、と、仕事のことを気にしながら読み始めた。
声色を使い、
感情を込めて読んであげるとキャッキャッと声をたてて喜ぶ。
ふくろうのオリバーくんがおしばいのおべんきょうをする場面では、自分もいっしょに、
「うれしいかお」や「おこったかお」「ぼく、きみがだーいすき」をやってみせる。
息子はもうすっかり、絵本の世界に入り込んでいる。ところが読み手である母は、このあたりから、
仕事の疲れからか、睡魔におそわれるのであった。
「こうしてオリバーは・・・・」(コックリ)
「お母さん、ねんねしないで。」
「ああ、ごめんごめん。こうしてオリバーは、パパもママもよろこばせました。
オリバーは大きくなったら・・・・」(コックリ)
「お母さんってばぁ。」
「ああ、ごめん。」
これを2、3回繰り返していると・・・、
そろそろ終わりに近づく。
「オリバーが大きくなったとき、さてみなさん、何になったと思いますか?」
という質問に対しては、お母さんより先に、自分が答えなければ気がすまない。
「しょうぼうしさん!」
やれやれ、これで仕事にかかれるぞ。
すると息子は、私の予想をうらぎって、「もう1回!」と言うのであった。
「はやく、はやくぅ」と特等席で、足をバタバタさせている。
「しょうがないな、もう1回だけだよ。」と言って、また同じことを繰り返す母であった。
「さあ、これで本当におしまい。」
もういい加減に寝てよね。お母さん、お仕事できないじゃないの。
という母の気持ちを知ってか知らずか、大胆にも彼は言った。
「もう1回!」
さすがの母も
3回目となると疲労の色を隠せない。
「おりこうだから、今日はもうねんねしようね。」
ようやく彼も納得して寝ようとしたが、今度は
「お母さんとピッタンコねんねする。」と言いだした。
「はいはい、わかったよ。」と、ピッタンコねんねをしてあげたら、
お母さんまでねんねしちゃって、気がついたら朝だった・・・・。
オリバーめ。
絵本が大好きなうちのオリバーくん。
『カラスのパン屋さん』では、絵本の中のパンをお母さんといっしょに食べるんだよね。
『もりたろうさんの自動車』では、銀行ギャングが川におちるところがおもしろいんだよね。
特等席で喜んでいる顔、不思議そうな顔、満ち足りている顔・・・・。
あなたの気持ちが、ずんずんお母さんに伝わってくるよ。
あなたのこれからの生活に、どんなにプラスになることか・・・・。
仕事のことを忘れ、あなたのことだけを考えて、ゆったりした気持ちで読んであげられたらいいのにね・・・・。
ごめんね、オリバーくん。
今度は、3回でも4回でも、10回でも読んであげるからね。