母への手紙

そのポスターは、私に語っていた。
「思い切って書いてごらん。母への想いを綴ってごらん。」
迷った末、応募することにした。
以下の文章は、平成25年夏、「母への手紙」というテーマで募集していた作文コンクールに応募したものである。
母さんへ
母さん、
突然ごめん。訊きたいことが五つあるんだけど、いいかな。
一つ目。
私が中学生の時、バスケット部でレギュラーになれなくて、
毎朝シュート練習をしたけど試合に出してもらえなくてさ、
それでも母さんはいつも応援に来てくれていたよね。
それって辛かったんじゃない?
二つ目。
私が高校生の時、合唱部の朝練習に出るためにK駅発五時半の汽車で行くって言ったらさ、
母さんは毎朝私にしっかりご飯を食べさせ、弁当を持たせてくれたよね。
朝何時に起きていたの?前の日の畑仕事で疲れていただろうに・・・。
三つ目。
長女と次女を東京方面の大学に進学させ、更に私も、ということになってさ、
本当は大変だったんじゃない?
私がバイトを増やそうかって言った時、
「心配するな。お金は何とかする。あなたは一生懸命勉強して夢を叶えなさい。」
って言ってくれたよね。
四つ目。
母さんが入院した時、病室で一緒にドラマを見たね。
主人公が癌になるドラマ。
「自分も癌かも…」
とつぶやいた母さんに、
「そんなことない!売店に行ってくる!」
と病室を飛び出し廊下で泣いた。気づいてた?
五つ目。
51歳で逝ってしまった母さん。
きっと無念で無念でたまらなかったよね?
だって、私の教員採用試験の合格通知も、
私の花嫁姿も見ることができなかったんだもの。
母さん、
私には二人の子どもがいます。
私は母さんのような温かくて強い母親になろうと、
必死で育ててきました。
おかげで二人とも、幼いころからの夢を実現させようとしています。
そんな孫の姿も見せたかった…。
最後に
追加で訊いてもいい?
母さん、本当は私のそばにいるんでしょ?
窮地に立たされると、いつも助けてくれる。ありがとう。
〈 追伸 〉
父さんは寝たきりです。
私が母さんの代わりに支えるから、まだそっちに連れていかないでください。
以上が応募作品の原文である。
入選できなかったが、
チャレンジできた自分に、結構満足している。
いつか、作文を募集していたH文庫を訪ねてみよう・・・・・。