私の手元に、1冊の大学ノートがある。あの時の「入院日誌」である。
母と看病していた家族が綴ったものである。
読んでいると、あの時の1コマ1コマが蘇ってくる。
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放射線治療の効果により、痛みは確かに薄れた。
本当に回復したかに見えた。
しかし、それは一時的なものであった。
病魔は、確実に母の体を蝕んでいった。
1979年の夏には、癌が全身に転移し、手のほどこしようがなかった。
これまで以上の苦しい闘病生活を強いられた。
痛みは日に日に増していき、痛み止めの注射の本数も増えていった。
こうして、壮絶とも言える病気との闘いは、1980年の1月4日まで続いた・・・。
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☆☆☆☆☆ 妻から夫へ ☆☆☆☆☆
◎ 病床で、家庭のだんらん想いつつ、 夫と娘のありがたさ知る。
◎ 孫の手を、にぎりしめてはみるものの、 抱かれぬつらさに寂しく思い。
◎ 夫恋うる心に変わりはあらねども、 病の床では、いたしかたなし。
◎ 夫からの歌をもらった嬉しさに、 涙ぐみつつペンを走らす。
☆☆☆☆☆ 夫から妻へ ☆☆☆☆☆
◎ 末娘、母の看病日課なり、 親子の愛を肌で受け継ぐ。
◎ 病床の身にてダイヤル回す妻、 想い切なく、愚痴を言うまい。
◎ 病院へ行く気はあれど公務あり、 待てる妻には、すまぬ思う。
◎ 治療の身、生き抜く妻の目がうるむ、 回復の兆し、ともに喜ぶ。
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