その後、さらに研究を重ね、たくさんの発表用スライドを作り、中央地区大会に臨みました。
そして、中央地区大会でも代表に選ばれ、県大会に出場することになったのです。
高校3年の6月のことです。
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<題目設定の理由>
母が頭痛やめまいを訴えていたのは、昨年夏のことでした。
診察してもらったところ、最高190・最低110の高血圧だというのです。
医師は治療法として、血圧降下剤の使用と食事療法を勧めました。
そこで、私のできることといえば食事療法しかありません。
この機会に、高血圧について詳しく知り、母の血圧降下の手助けになりたいと思いました。
<実施計画>
1 高血圧について
2 母の食生活の実態把握
3 高血圧によい食品、制限する食品の調査
4 3に基づいた献立作成
5 まとめと反省
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その朝、A駅から特急電車に乗り込みました。
同行していたのは、Aさん・Bさん・Cさん・S先生。
Aさんは、スライドに映し出される図や文字を指し示す係りで、
行きの電車の中もずっと一緒でした。S先生もそばにいました。
BさんとCさんはスライド係りで、たくさんのスライドと
映写機をもって電車に乗り込み、途中で1つ前の車両に移動したりしてました。
やがてU駅に着き、タクシーに乗り、まもなく会場に着くという頃になって、
BさんとCさんが叫んだのです。
「あっ! 忘れた!」
なんと、大事なスライド一式を特急電車の網棚にあげたまま、忘れてしまったというのです。
その後、U駅に問い合わせしたものの、スライド一式が手元に届くのは、夕方になるとのこと。
スライドがないと、研究発表にならないのです。
結局、さゆりは出場を断念せざるを得なかった・・・。つまり、棄権したのです。
『冗談じゃないわよ!私のこの1年間の努力をどうしてくれるの!!』
と心の中で叫んで、ただただ泣くばかり・・・・。
BさんとCさんは「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん・・・・」
と何度も謝るんだけど、彼女たちに「もういいよ。」なんて言えなかった・・・。
涙が枯れるまで泣いて、泣き疲れて家にたどり着きました。
東北大会出場を期待していた母が、玄関で待ちかまえていて聞きました。
「どうだった?」
枯れたと思った涙がまた、どっとあふれてきて、やっと3分後に言いました。
「だめだった・・・。だって、発表できなかったもん。」
その後、一部始終を語り終えるまで2時間もかかったけど、
母は、だまって聞いてくれました。
このホームプロジェクトのおかげでよかったことは・・・、
母の血圧が本当に下がって、元気になったことと、
そして今、仲間とともに1つのことに打ち込んだ1年間を、鮮明に思い出せること。
あれから随分月日が流れたけど、手元には、「研究大会集録:第11集」とたくさんのスライドがあります。